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抵当権抹消手続きを自分でしたい方へ 手順・必要書類・費用について

投稿日:2023.12.31 最終更新日:2024.3.12
司法書士 権藤 健裕


住宅ローンの返済が終わったら、抵当権の抹消手続きが必要になります。このブログでは、抵当権抹消に関する基本的な情報から手続きの流れ、費用の内訳、金融機関とのやりとりまで、一般の方が抱える初歩的な疑問に答えていきます。
なお、抵当権抹消を法務局に申請する時点で所有者として登記されている方が亡くなっている場合は先に相続登記が必要です。所有者として登記されている方の住所・氏名が現在の住所・氏名と異なっている場合は、抵当権抹消とあわせて変更登記が必要です(住所変更手続きはこちらを参考にして下さい。)

抵当権抹消の基本

1. 抵当権とは何?

住宅ローンなどを借りるときに、購入する不動産に金融機関が設定する権利のこと。
自宅不動産を購入する時、資金を準備する為に金融機関の住宅ローンを利用するケースが多いです。その場合、不動産の所有者変更登記とあわせて抵当権を設定(登記)することが借り入れの条件となっていることが一般的です。この抵当権設定は司法書士が行います。
住宅ローンの借り換えの時には新たに抵当権を設定(登記)し、完済する金融機関の抵当権を抹消します。
抵当権を設定しておくことにより、借主が住宅ローンを返済できなくなった場合に、金融機関は抵当権を設定した不動産を売却して、その売却代金をローンの返済に充てることが出来ます。この売却の為に金融機関は訴訟を起こす必要がありません。

2. 抵当権抹消の必要性

住宅ローン完済は大きな責任を無事に果たしたという一大イベントですが、それですべてが終わったわけではありません。多くの方が誤解されているように感じるのは、ローン完済後も不動産に登記された抵当権が自動的に消えないと言うことです。不動産の所有者が法務局に登記された抵当権を抹消する為の申請を行う必要があります。
抵当権が残っているという状況は、表面上問題無いように見えます。実際、ローンを支払い終わっているので、抵当権を実行されて不動産を失う心配はありません。完済したら何日以内に抹消しなくてはいけないというルールもありません。その為、借入金の返済が終わっているのに抵当権が残っている不動産は珍しくありません。
しかし抵当権抹消を怠ると、予期せぬデメリットに直面することもあります。例えば、抵当権抹消に必要な書類を紛失したり、金融機関に合併・名称変更・代表者変更・本店移転などの変化が生じ、申請書の作成が複雑になり、手間やコストが増大する可能性があります。出来れば早めに抹消した方が良いと思います。 さらに、将来的には休眠担保としての問題が生じるかもしれません。不動産の売却や再度融資を受ける時に障害となります。

抵当権抹消手続きの流れと必要書類

必要な書類とその取得方法
まずは法務局で登記事項証明書を取得します。所有者の住所・氏名や抵当権の内容などを確認します。不動産を購入して以来初めて登記事項証明書を取得する方も多いのではないでしょうか。借りた時は住宅金融公庫だった抵当権者がいつの間にか住宅金融支援機構に変わっていたりすることもあります。 インターネットを利用して、 登記情報提供サービスで取得する方法もあります。

法務局に提出する書類
 登記申請書と添付情報(登記申請書に添付する書面)が必要です。
 ・登記申請書・・・自分で作成
 ・添付情報 ・・・金融機関から受領
「登記原因証明情報(抵当権解除証書など) 登記識別情報又は登記済み証 金融機関からの委任状」

金融機関とのコミュニケーション

住宅ローンを完済したら、後日、金融機関で抵当権抹消に必要な書類を受け取ります。抵当権抹消に必要な書類を揃えて送ってくれる金融機関もあります。
たまに物件や日付などが記載されていない未完成の抵当権解除証書や委任状を渡されることもあります。その場合は申請者が自分で物件や日付を記入し、完成させる必要があります。未経験の方にとって物件を記入することは難しいかと思いますので、金融機関に記入(印字)をお願いした方が良いでしょう。

登記申請書は自分で作成しなければなりません。
金融機関が申請書の作成見本を添付してくれている場合もあります。
法務局のホームページの説明が良くできていると思います。会社法人等番号は金融機関の委任状に記載されているケースが多いです。
法務局に各種不動産登記の申請見本が棚に入っており、自由に受取ることが出来る場合もあります。

抵当権抹消に必要な費用の内訳と節約のコツ

抵当権抹消にかかる費用
 登録免許税は不動産1個につき1,000円。土地1個と建物1個であれば2,000円。
費用を抑えるには
 自分で登記申請書を作成し、管轄の法務局に登記申請書と添付情報を提出すれば費用は登録免許税だけです。

管轄について

法務局は各都道府県に複数あります。申請を行う法務局は、登記申請をする不動産の所在地を管轄する法務局と決められています。申請する方にとって行き易い法務局とは限りません。管轄が異なる複数の不動産に抵当権が設定されている場合、それぞれの法務局に抵当権抹消を申請する必要があります。抵当権を設定した時の法務局が管轄法務局である可能性が高いですが、かなりの法務局が統廃合されているので念のため調べることをお勧めします。
管轄は法務局のホームページで確認することが出来ます。

問題が生じた時の対応方法

ぜひ、司法書士にご依頼ください。抵当権抹消には比較的簡単なものから難しいものまでいろいろあります。一度チャレンジしてみて無理だと思ったら専門家に依頼した方が良いと思います。
司法書士はホームページで探しても良いですし、金融機関にお願いすれば紹介してくれるかもしれません。各地の司法書士会でも紹介可能です。

司法書士に依頼するメリットとデメリット

メリット
時間の節約。ストレス回避。申請書を頑張って作成し、必要書類を揃えて法務局に提出しても、間違いがあれば訂正が必要です。訂正できない間違いであれば取下げてやり直しということになります。何度も法務局に通うことになるかもしれません。遠方の法務局に書面で申請している場合は訂正に行くのも大変です。司法書士はオンラインで申請することが殆どなので、申請する不動産の管轄法務局が遠方であっても問題ありません。
私も司法書士になるとは全く考えていなかった時に家族の抵当権抹消の申請を手伝ったことがあります。意味不明な書類の作成にすごくストレスを感じました。読み辛い手書きの申請書だったので法務局にも迷惑をかけたのではないかと思います。

デメリット
司法書士への報酬がかかる。自分で申請する場合と比べて1~2万円費用が多くかかります。

登記完了証について

法務局で抵当権抹消手続きが完了したら、「登記完了証」というものが発行されます。登記完了証は金融機関用と不動産所有者用で2枚です。金融機関にもよりますが、金融機関への登記完了証の提出は不要な場合が多いように思います。

まとめ

抵当権抹消は、住宅ローン完済後の重要な手続きです。登記申請書の作成に慣れていない方にとって、簡単な手続きではありません。今回は、その手続きの流れや必要な書類、費用に関する情報を簡単にご紹介しました。
金融機関とのコミュニケーションや代行サービスの選び方についても触れてきました。これらの情報が、抵当権抹消のプロセスを理解する為の役に立つことを願っています。

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